急な予定変更、どう伝える?:発達障害の子の不安を和らげる声かけと工夫
急な予定変更が苦手なのはなぜでしょうか?
日々子育てをされている中で、「今日は〇〇の予定だったのに、急に△△に変更になったことを伝えたら、子どもがひどく混乱してしまった」というご経験はありませんか。特に発達障害のあるお子様の場合、予定の変更や予測できない出来事に対して強い不安を感じたり、混乱したりすることが少なくありません。
これは、発達特性として、見通しが立たないことや変化への適応に難しさがあるためと考えられます。予定が突然変わることは、お子様にとって「次に何が起こるか分からない」という状態を生み出し、強いストレスとなるのです。
この記事では、このようなお子様の混乱や不安を和らげ、よりスムーズに予定変更を受け入れてもらうための具体的な声かけや、家庭でできる簡単な工夫についてご紹介します。
発達特性と予定変更の難しさ
発達障害のあるお子様は、一般的に以下のような特性から予定変更を苦手とすることがあります。
- 見通しを立てるのが難しい: 今後の流れや結果を予測することが苦手なため、決まっていた予定が変わると、その先どうなるのか分からなくなり不安になります。
- 変化への適応に時間がかかる: 一度決まった手順やパターンに安心感を覚える傾向があり、そこから外れることに抵抗を感じやすいです。
- こだわりの強さ: 予定やルーティンに対するこだわりが強い場合、それが崩れることに対して強い不快感を示すことがあります。
- 感覚過敏・鈍麻: 予定変更に伴う環境の変化(場所、音、人など)が、感覚的に受け入れがたい刺激となることがあります。
これらの特性を理解した上で、お子様に寄り添った対応を考えていくことが大切です。
予定変更を伝える前の準備
急な変更にスムーズに対応できるようになるためには、普段からの工夫も重要です。
1. 普段から見通しを立てる習慣をつける
日々の生活で「次に何をやるか」が見通せるようにしておくと、予定が変わった時にも「流れが変わったんだな」と比較的受け入れやすくなります。
- 日課やルーティンを決める: 朝起きてから家を出るまで、帰宅してから寝るまでなど、決まった流れを作ります。「起きたら顔を洗う」「ご飯を食べたら着替える」など、簡単なことから始めましょう。
- 視覚的なスケジュールを活用する: 文字での予定表だけでなく、絵カードや写真、ホワイトボードなどにその日の予定を書き出し、お子様が見やすい場所に貼っておくのが有効です。これにより、「今はこれをしていて、次にあれをするんだな」という見通しが持ちやすくなります。
2. 「変更の可能性」について軽く話しておく
「予定は変わることもある」ということを、日頃から少しずつ伝えておくことも有効です。「絶対に変えられない予定」という固定観念が強いと、変更が起きた時の衝撃が大きくなります。
例えば、「この公園、今日はお休みかもしれないな」「もしかしたら、雨で遊びに行けないかもね」など、可能性として伝えておくと、実際にそうなった時にゼロからのスタートよりも受け入れやすくなることがあります。ただし、不安を煽りすぎないよう、あくまで可能性の話として、軽いトーンで伝えることが大切です。
予定変更を伝える具体的な声かけと工夫
実際に予定変更を伝える際に役立つ具体的な声かけと工夫をご紹介します。
1. 落ち着いた環境で、穏やかに伝える
変更を伝える際は、お子様が他のことに集中していたり、気が散るものが多い場所を避け、落ち着いて話を聞ける環境を選びましょう。親御さん自身も深呼吸をして、穏やかなトーンで話すことを心がけてください。感情的になると、お子様も不安を感じやすくなります。
2. 具体的に、分かりやすく伝える
抽象的な表現は避け、何がどう変わったのかを具体的に伝えます。特に、いつ、どこで、何を、どのように変更するのかを明確に示しましょう。
- 声かけの例:
- 「今日ね、お昼ご飯の後にお買い物に行く予定だったでしょう?それがね、お父さんの都合で、お買い物は明日にすることになったんだ。」
- 「残念だけど、今日の公園は雨でお休みみたい。だから、公園に行くのはまた晴れた日にしようね。」
3. なぜ変わったのか、理由を簡潔に伝える
理由が分かると、お子様も納得しやすくなります。ただし、長々と説明するのではなく、簡潔に分かりやすく伝えましょう。お子様が理解しやすい言葉を選ぶことが重要です。
- 声かけの例:
- (お買い物の場合)「お父さんが急にお仕事が入っちゃったから、今日一緒に行けなくなったんだよ。」
- (公園の場合)「雨が降ると遊具が濡れちゃうから、危なくないように今日はお休みなんだ。」
4. 変更後の具体的な予定や代替案を示す
変更になったことだけを伝えるのではなく、その後にどうなるのか、または代わりに何をできるのかを具体的に示しましょう。これにより、新しい見通しを持つことができ、不安が軽減されます。
- 声かけの例:
- 「今日のお買い物はなくなったけど、その代わり、家で一緒にブロックで遊ぶのはどうかな?」
- 「公園には行けないけど、お家で一緒に絵本を読もうか。それとも、室内でできる遊びを探してみる?」
- 「お買い物は明日になったから、明日またお買い物のことをお話ししようね。」
代替案は、お子様の興味やその時の状況に合わせて複数提示し、お子様自身に選ばせるのも良い方法です。
5. 視覚的なサポートを活用する
言葉での説明だけでなく、視覚的な情報も組み合わせるとより伝わりやすくなります。
- 視覚的な工夫の例:
- 予定表の書き換え: 壁に貼っている予定表を、お子様と一緒に修正します。バツをつけたり、新しい予定を書き加えたり、絵カードを入れ替えたりすることで、変化を「見える化」します。
- 写真や絵を見せる: 変更後の場所や活動の写真を急いで探して見せたり、絵カードで示したりします。「ここに行くんだよ」「これをやるんだよ」と具体的に示すことで、漠然とした不安を減らします。
- 変更理由の視覚化: なぜ変更になったのかを簡単な絵や図で示すことも有効です。
6. お子様の気持ちに寄り添う声かけ
予定変更に対してお子様がネガティブな感情を示した場合、まずはその気持ちを受け止めることが大切です。「残念だったね」「がっかりしたね」「びっくりしたね」など、共感する言葉をかけましょう。感情を否定せず、「〇〇な気持ちになったんだね」と代弁することで、お子様は「自分の気持ちを分かってもらえた」と感じ、安心感を得やすくなります。
- 声かけの例:
- 「〇〇に行けなくなって、すごく残念だね。ママも残念だよ。」
- 「急に予定が変わって、びっくりしちゃったね。大丈夫だよ。」
その後、落ち着いてから、変更後の予定について改めて話を進めると良いでしょう。
感情的な混乱が起きた場合の対応
声かけや工夫をしても、強い不安や混乱から感情的な爆発(パニック)が起きてしまうこともあるかもしれません。その際は、まずお子様の安全を確保し、落ち着くことを最優先にしましょう。
- 落ち着いて見守る: 感情的になっている最中に、問い詰めたり説得しようとしたりしても、ほとんどの場合逆効果です。まずは安全な場所で、落ち着くまで寄り添って見守りましょう。
- 短い言葉で安心させる: 必要に応じて、「大丈夫だよ」「ここにいるよ」など、短い安心する言葉をかけます。
- 落ち着いてから話す: 落ち着きを取り戻してから、「さっきはびっくりしたね」「予定が変わって嫌だったね」などと、その時の気持ちを振り返り、優しく話を聞いてあげましょう。そして、改めて変更後の予定について、お子様のペースに合わせて説明します。
焦らず、小さな変更から練習する
予定変更への対応力は、すぐに身につくものではありません。まずは、影響の少ない小さな変更から練習を始めてみましょう。「今日のデザート、〇〇じゃなくて△△になったよ」など、お子様が受け入れやすい変更から経験を重ねていくと良いでしょう。そして、変更に対応できた時には、「ちゃんと聞けたね」「偉かったね」などと具体的に褒めて、成功体験を積ませることが自信につながります。
親御さん自身も、完璧を目指す必要はありません。うまくいかない時があっても当然です。「今日は難しかったね、次はこうしてみようか」と前向きに考え、お子様と一緒に少しずつ成長していく姿勢が大切です。一人で抱え込まず、利用できる支援や情報を活用しながら、お子様との穏やかなコミュニケーションを目指していきましょう。
まとめ
発達障害のあるお子様にとって、急な予定変更は強い不安や混乱の原因となり得ます。これは見通しを持つことや変化への適応に難しさがあるという発達特性と関連しています。
- 普段から見通しを立てる習慣(視覚的なスケジュールなど)をつけること、変更の可能性について軽く話しておくことなどが、変更を受け入れやすくするための準備となります。
- 実際に変更を伝える際は、落ち着いた環境で、具体的に、理由を簡潔に伝え、変更後の予定や代替案を必ず示すことが重要です。
- 視覚的なサポート(予定表の書き換え、写真など)を活用したり、お子様の残念な気持ちに寄り添ったりすることも、不安を和らげるのに効果的です。
- 感情的な混乱が起きた場合は、まず安全を確保し、落ち着いてから改めて話を聞くようにしましょう。
焦らず、小さな変更から成功体験を積み重ねていくことで、お子様は少しずつ変化に対応する力を身につけていくでしょう。これらのヒントが、日々のコミュニケーションの助けとなれば幸いです。