「聞かれ続ける」「一方的に話し続ける」悩みに:発達障害の子への声かけと家庭でできる工夫
発達障害のお子様との会話、「どうして?」の嵐や一方的なおしゃべりに疲れていませんか?
発達障害のあるお子様とのコミュニケーションでは、「どうして?」「なんで?」と質問が止まらなかったり、自分の好きなことについて一方的に延々と話し続けたりすることがあります。悪気がないことは分かっていても、どう対応すれば良いか分からず、時には疲れてしまったり、イライラしてしまったりすることもあるかもしれません。
このような状況は、発達特性からくるコミュニケーションスタイルの違いによるものです。お子様も、伝えたい気持ちや知りたい気持ちでいっぱいです。この記事では、お子様の特性を理解しつつ、保護者様の負担を減らし、より穏やかなコミュニケーションを築くための具体的な声かけや家庭でできる簡単な工夫をご紹介します。一人で抱え込まず、ぜひヒントとして活用してみてください。
なぜ「質問攻め」や「一方的なおしゃべり」になりやすいのか?
お子様がなぜ特定の話し方をするのか、その背景にある発達特性を理解することは、対応策を考える上で役立ちます。
- 興味関心への強い集中: 特定の物事やテーマに強い関心を持つ特性があると、そのことについてもっと知りたい、誰かに伝えたいという気持ちが強くなり、質問攻めになったり、一方的に話し続けたりすることに繋がります。
- 社会性の特性: 会話のキャッチボールのルール(相手の話を聞く、順番に話す、相手の関心に合わせるなど)を自然に習得することが難しい場合があります。そのため、一方的に話し続けてしまったり、相手の反応に関係なく質問を繰り返したりすることがあります。
- 情報の処理方法: 知りたい情報が多いと、一度にたくさんの質問をしてしまったり、頭の中にある情報を整理せずに話し始めてしまったりすることがあります。また、疑問に感じたことをすぐに言葉にしないと不安になる、という場合もあります。
これらの特性は、お子様が意図的に困らせようとしているわけではなく、脳機能の特性によるものであることを理解することが大切です。
【実践編】「質問攻め」や「一方的なおしゃべり」への具体的な声かけと工夫
ここでは、お子様の「質問攻め」や「一方的なおしゃべり」に穏やかに対応するための具体的な方法をご紹介します。
1. 「質問攻め」が始まったら
お子様の知的好奇心は素晴らしいものですが、質問が続くと保護者様が疲弊してしまうことがあります。全てにその場で完璧に答えようとせず、対応を調整する工夫をしてみましょう。
-
回答を先延ばしにする声かけ
- 「良い質問だね。でも、今はお料理中だから、これが終わったらゆっくり話そうね。」
- ポイント: 質問自体を否定せず、まず肯定的な言葉を添えます。「いつ話せるか」の見通しを示すことで、お子様は少し安心して待つことができます。
- 「うーん、それすごく難しい質問だから、ママも少し調べてから答えたいな。夕ご飯の後で一緒に図鑑を見てみようか?」
- ポイント: すぐに答えられないことを正直に伝えます。一緒に調べるという提案は、お子様の知的好奇心を満たしつつ、親子の学びの時間にも繋がります。
- 「ごめんね、今ね、ちょっと考えたいことがあるの。〇時になったら聞けるから、待っていてくれるかな?」
- ポイント: 親自身の状況を具体的に伝えます。具体的な時間を示すことで、待つことへの抵抗感を減らします。タイマーなどを活用するのも効果的です。
- 「良い質問だね。でも、今はお料理中だから、これが終わったらゆっくり話そうね。」
-
質問の数を調整する声かけ
- 「たくさん質問があるね!ありがとう。じゃあ、今日はその質問の中から、一番聞きたいことを一つだけ教えてくれるかな?」
- ポイント: 全ての質問に答えるのは難しいことを伝えつつ、優先順位をつける練習を促します。お子様自身が考える時間を持つことができます。
- 「さっきから3つ質問してくれたね。一旦おしまいにして、次はママが質問してもいいかな?」
- ポイント: 質問の数を意識させ、会話のターンがあることを教えます。「一旦おしまい」という区切りを示すことが大切です。
- 「たくさん質問があるね!ありがとう。じゃあ、今日はその質問の中から、一番聞きたいことを一つだけ教えてくれるかな?」
-
自分で調べる方法を促す声かけ
- 「それについては、この本に書いてあるかもしれないね。一緒に探してみようか?」
- ポイント: 答えを直接教えるのではなく、自分で情報にアクセスする方法を教えます。図鑑、本、インターネット検索などを活用する機会を与えます。
- 「それについては、この本に書いてあるかもしれないね。一緒に探してみようか?」
2. 「一方的なおしゃべり」が止まらない時
お子様が楽しそうに話しているのを聞くのは嬉しいことですが、延々と続くと保護者様の負担になります。会話のキャッチボールを意識させる、あるいは話を聞く時間とそうでない時間を区別するなどの工夫が必要です。
-
聞いているサインを示す声かけ・行動
- 「うんうん」「なるほど」「へえ、そうなんだ!」といった相槌や、うなずき、アイコンタクト。
- ポイント: 全ての内容に深く反応できなくても、「あなたの話を聞いていますよ」というサインを送ることが大切です。これにより、お子様は安心して話し続けることができます。
- 「〇〇のお話、すごく面白いね。特に△△のところがよく分かったよ。」
- ポイント: 話の内容の一部を具体的に返すことで、「聞いてくれている」という実感を与えます。
- 「うんうん」「なるほど」「へえ、そうなんだ!」といった相槌や、うなずき、アイコンタクト。
-
会話の区切りをつける声かけ
- 「〇〇、お話聞かせてくれてありがとう。すごくよく分かったよ。そろそろおしまいにして、次はお着替えしようか。」
- ポイント: 話を聞いたことへの感謝を伝えつつ、次の行動へと自然に促します。話を聞き終えた区切りを明確に示します。
- 「〇〇のお話、面白いからもっと聞きたいんだけど、あと5分でこのお話はおしまいにして、晩ご飯にしよう。時計を見ていてくれる?」
- ポイント: 具体的な時間制限を設けます。タイマーや時計を視覚的に示すと、より分かりやすくなります。
- 「次はママがお話してもいいかな? 〇〇は聞いていてね。」
- ポイント: 会話には順番があることを教えます。お子様が聞く側に回ることを促します。
- 「〇〇、お話聞かせてくれてありがとう。すごくよく分かったよ。そろそろおしまいにして、次はお着替えしようか。」
-
話を聞く時間を設定する工夫
- 「〇〇タイム」のように、1日のうちで「この時間は〇〇のお話をじっくり聞く時間」と決めておく。
- ポイント: いつでも一方的に話しても良いわけではない、という緩やかなルールを作る助けになります。お子様も「この時間になったらママに話せる」という見通しを持つことができます。
- 家族で話すルールを可視化する(例:「一人ずつ話す」「話したいときは手を挙げる」などのカードを作る)。
- ポイント: 会話のルールを視覚的に提示することで、理解しやすくなります。特に複数人で話す場面で有効です。
- 「〇〇タイム」のように、1日のうちで「この時間は〇〇のお話をじっくり聞く時間」と決めておく。
3. 保護者自身の工夫も大切
お子様への声かけや工夫と同時に、保護者様自身の心の持ち方も重要です。
- 全てに答えようとしない、完璧を目指さない: 質問攻めや一方的なおしゃべりは、お子様の特性ですぐになくなるわけではありません。完璧に対応しようとせず、「今日は一つだけ試してみよう」「疲れているときは無理しない」と割り切ることも大切です。
- 休憩を取る: 質問や話が続いて疲れたら、「ちょっと疲れたからお水飲んでくるね」などと言って、短い休憩を取りましょう。親自身が冷静になる時間を作ることは、感情的な対応を防ぐために重要です。
- 期待値を調整する: 定型発達のお子様と同じように「こうなってほしい」と強く期待しすぎると、うまくいかなかったときに落ち込みやすくなります。お子様のペースや特性を理解し、スモールステップで目標を設定しましょう。
- 相談できる人を見つける: 一人で悩まず、地域の相談窓口、専門機関、支援団体、同じ悩みを持つ保護者の会などに相談してみましょう。話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になります。
応用・発展:コミュニケーションをより豊かなものに
ご紹介した声かけや工夫は、お子様の年齢や特性、その時の状況によって調整が必要です。
- お子様の「話したい気持ち」を別の形で表現する: 絵を描く、日記を書く、好きなことについて調べる時間を設けるなど、会話以外の方法で興味関心を満たす機会を提供することも考えられます。
- 会話の「テーマ」を意識させる: 「今日の楽しかったことは?」など、具体的なテーマを決めて話す練習は、会話の方向性を定める助けになります。
- ロールプレイング: 親子で聞き役・話し役を交代するロールプレイングは、相手の話を聞く練習や、相手に分かりやすく話す練習になります。
焦らず、お子様の反応を見ながら、保護者様にとって無理のない範囲で色々な方法を試してみてください。
まとめ:穏やかな会話は、お互いの理解から
発達障害のあるお子様との会話における「質問攻め」や「一方的なおしゃべり」は、お子様の特性から生じることが多いものです。これらの特性を理解し、すべてに対応しようとせず、具体的な声かけや家庭でできる簡単な工夫を取り入れることで、保護者様の負担を減らし、より穏やかなコミュニケーションを築くことができます。
- 質問には、その場で全て答えず、先延ばしにする、数を絞る、自分で調べる方法を促すなどの工夫を。
- 一方的なおしゃべりには、聞いているサインを示す、区切りをつける、話を聞く時間を設定するなどの工夫を。
- そして何より、保護者様自身が完璧を目指さず、休憩を取り、相談することを忘れないでください。
お子様との会話は、時に難しさを伴いますが、これらのヒントが、保護者様が笑顔で、お子様とのコミュニケーションを楽しめる一助となれば幸いです。お子様との絆を大切にしながら、少しずつ、できることから試してみてください。