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「忘れ物・失くし物が多い」悩みに:発達障害の子への声かけと家庭でできる工夫

Tags: 発達障害, 声かけ, 工夫, 忘れ物・失くし物, 子育て, ADHD

発達障害のあるお子様の忘れ物や失くし物にお悩みの保護者の皆様へ

お子様が学校や習い事の持ち物を忘れてしまったり、家の中で大切なものをどこかに置いて失くしてしまったりすることが続き、どうすれば良いのか悩んでいらっしゃる保護者の方も多いのではないでしょうか。何度注意しても繰り返されると、「どうしてうちの子だけこんなに…」と、つい感情的になってしまうこともあるかもしれません。

忘れ物や失くし物は、お子様の「やる気がない」「だらしない」といったことだけが原因ではない場合が多くあります。特に発達障害のあるお子様の場合、特性からくる認知の偏りや脳機能の違いが関係していることが少なくありません。

このページでは、発達障害のあるお子様が忘れ物や失くし物を減らすために、保護者の方が家庭でできる具体的な声かけや工夫についてご紹介します。特性の理解を深めながら、お子様にとって実践しやすく、保護者の方にとっても負担の少ない方法を見つけるヒントとなれば幸いです。

なぜ忘れ物・失くし物が多くなるのでしょうか?~発達特性との関連~

発達障害、特に注意欠如・多動症(ADHD)の特性を持つお子様は、以下のような認知や行動の特性から、忘れ物や失くし物が多くなる傾向が見られます。

これらの特性は、お子様の「がんばりが足りない」わけではなく、脳の機能的な違いによるものです。そのため、「ちゃんとやりなさい」「気をつけなさい」といった精神論や抽象的な指示だけでは、改善が難しいことがあります。特性を理解した上で、お子様が具体的に何をすれば良いか分かりやすく示し、実行しやすい環境を整えることが大切になります。

具体的な声かけの例と実践のポイント

お子様に何かを忘れてほしくないときや、失くし物を探すときなどに使える具体的な声かけの例をご紹介します。

1. 指示を分かりやすく伝える声かけ

持ち物の準備や片付けなど、忘れ物を防ぐための行動を促す際に有効です。

2. 確認を促す声かけ

準備ができたと思った後や、家を出る直前など、最終確認を促す際に有効です。

3. 肯定的な行動を促す声かけ

指示通りにできたときや、自分で忘れ物に気づいて対処できたときに、ポジティブな行動を強化する際に有効です。

4. 失くし物をしたときの声かけ

失くし物が見つからず、お子様が困っているときやパニックになりそうなときに落ち着いて対応する際に有効です。

家庭でできる具体的な「工夫」

声かけだけでなく、環境を整えたり、視覚的なサポートを活用したりすることで、忘れ物や失くし物を減らすことができます。

1. 物の「定位置」を決める

鍵、財布、学校の準備物(宿題、連絡帳)、リモコンなど、失くしやすいものや大切なものには必ず決まった「住所」を作ります。

ポイント: 物の定位置は、子どもが分かりやすく、使いやすい場所にすることが重要です。家族みんなでルールを共有し、協力して定位置に戻す習慣をつけましょう。定位置を写真に撮って貼っておくのも有効です。

2. 持ち物リストやチェックリストを活用する

準備するものが決まっている場合(学校の持ち物、習い事の持ち物など)に有効です。

ポイント: チェックリストは、子どもが自分で確認する力を育む手助けになります。最初は保護者の方が一緒に確認し、慣れてきたら子ども自身に任せてみましょう。達成感を得られるように、できたことへの肯定的な声かけも忘れずに行います。

3. 視覚的なサポートを取り入れる

目で見て分かりやすくすることで、指示の理解や行動の定着を促します。

ポイント: 発達障害のあるお子様は、耳からの情報よりも目からの情報の方が理解しやすい場合があります。視覚的な手がかりを増やすことで、「次に何をすれば良いか」が明確になり、自分で行動しやすくなります。

4. 時間的なリマインダーを設定する

準備に取りかかる時間や家を出る時間を知らせるために、アラームやタイマーを活用します。

ポイント: 時間の見通しを持つのが苦手なお子様にとって、時間的な区切りが分かりやすくなります。アラームが鳴ったら次に何をすれば良いかを事前に決めておくと、スムーズに行動に移りやすくなります。

5. 紛失防止グッズを検討する

特に失くしやすいもの(鍵、ICカードなど)には、紛失防止タグやストラップなどを活用することも有効です。

ポイント: 高価なものや、失くすと困るものに限定して活用を検討します。グッズに頼りすぎるのではなく、あくまで「うっかり」を防ぐための一つの手段として捉えましょう。

継続するためのヒントと親御さんへのお願い

まとめ

発達障害のあるお子様の忘れ物や失くし物は、単なる不注意ではなく、特性による認知や実行機能の苦手さが関係していることが多くあります。叱るだけでは解決しないことも多いため、お子様の特性を理解し、具体的に何をすれば良いか分かりやすく示し、実行しやすい環境を整えることが効果的です。

今回ご紹介した具体的な声かけや、物の定位置決め、チェックリストの活用、視覚的なサポート、時間的なリマインダーなどの工夫は、ご家庭で比較的簡単に取り入れられるものばかりです。全てを一度に試す必要はありません。お子様の様子やご家庭の状況に合わせて、できそうなことから一つずつ試してみてください。

すぐに劇的な変化が見られなくても焦る必要はありません。お子様のペースに合わせて、根気強く、そして前向きに工夫を続けていくことが大切です。このページが、お子様とのコミュニケーションをより穏やかで円滑にし、お子様自身が忘れ物や失くし物に対処する力を育むための一助となれば幸いです。